遺産調査,相続人調査
被相続人の遺産を分割するためには,前提として,遺産の範囲と相続人の範囲を確定しなければなりません。
1.財産及び負債の調査
まず,被相続人の遺産として,どのような財産があるかを調査します。調査方法は,遺産を構成する財産によって,それぞれ異なります。
被相続人がどのような不動産を所有していたかは,被相続人が持っていた権利証,固定資産税の納付証明書などの資料を精査することによって判明することがあります。所有していた不動産が判明した場合には,法務局で登記簿謄本を取得し,その不動産にまつわる権利関係を明らかにする必要があるでしょう。また,遺産分割に際しては,その不動産がどの程度の資産価値を持っているかが重要になりますので,市町村役場において固定資産評価証明書を取得しておく必要もあるでしょう。
被相続人の預貯金や保険などは,被相続人が持っていた預貯金通帳や保険証書などの資料から判明することがあります。また,預金口座や保険内容が明らかになった場合には,金融機関などに預金残高証明書など,その時点での預金残額や保険の解約返戻金額が判明する資料を取得しておきましょう。
また,相続人は,被相続人が抱えていた負債も引き継ぐのが原則ですので,契約書や返済予定表などがないか確認しておきましょう。
2.相続人の調査
次に,被相続人の遺産を取得する者を確定するためには,被相続人の親族関係を明らかにしなければなりません。相続人の範囲は,民法によって定められていますが(民法900条),実際に,民法の定める親族が存在しているかどうかは,戸籍謄本,除籍謄本,改正原戸籍謄本を取得することによって調査します。戸籍を取得するためには,戸籍に記載されている者本人,配偶者及び直系親族が,戸籍に記載されている者の本籍地の市町村役場で申請をする必要があります。ただし,弁護士などの一定の職業にある者は,業務遂行のために必要な範囲で,戸籍を取得することが可能とされています(戸籍法10条の2第3項)。